十和田市現代美術館の10周年を記念して開催
アジアを代表する世界的美術家
スゥ・ドーホーの個展
本展「Passage/s」で、韓国出身の作家スゥ・ドーホーは、その半透明の布を使ったシリーズの最新作を展示します。また彼のロンドン、ニューヨーク、ソウルを移動する中で得られた視点を表現した映像作品も展示します。これらの作品は、いくつかの場所とその文化を経験するときに見えてくるものを通して、人間性やアイデンティティとは何かという、根本的な問いを投げかけるものです。
スゥはこれまで、家、物理的な空間、移動、そして記憶といったテーマについて考え、ドローイング、映像、彫刻などさまざまな素材に取り組んできました。スゥには、個人と集団の関係性を探るという、もう一つのテーマがあります。そのテーマに沿った作品の一つ、《コーズ・アンド・エフェクト》(2008)が十和田市現代美術館の常設展示となっています。
スゥ・ドーホー
1962年韓国生まれ。ソウル大学校卒業後アメリカに渡り、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで絵画を学び、BFAを取得、イェール・ユニバーシティ・スクール・オブ・アートで彫刻を学び、MFAを取得。ロンドン、ニューヨーク、ソウルを拠点とし、家や家の中のアイテムを象った彫刻と、没入感のあるインスタレーションを通して、異なる文化間を移動するときに感じられる気持ちを表現しつづけている。半透明の布を用いた彫刻のシリーズは、彼がそれまで住んだ空間の手触りと繊細な細部を再現するもの。これらの作品は軽くて持ち運びができ、どんな場所にでも設置できるもので、スゥ自身によって「スーツケース・ホーム」と呼ばれている。
作家メッセージ
十和田市現代美術館の開館当初に常設作品のコミッションワークを受けて以来、十和田は私の記憶の中でずっと特別な場所でした。また美術館の建築は私の実践と共鳴するものでした。アーティストごとに独立した展示室があり、それらをつなぐ透明なガラス壁の通路は、美術館の内と外を隔てる境界をなくしていくのです。これが今回、この展覧会に半透明の布でできた構造物のシリーズを展示したいと考えた理由です。重さのない構造物のなかを通り抜けることができるこの作品は、見る人を、一つの文化や建築から、別の文化や建築へと連れ出し、その過程で様々な境界や想像上の場所が交差するような体験を引き起こすでしょう。