「第1回 韓国読書感想文コンテスト 日本大会」において最優秀賞をはじめ入賞された方々への表彰式が、2009年11月20日(金)に韓国文化院ハンマダンホールで以下のように行われました。
このコンテストは、韓国文学翻訳院の協力のもと、韓国文学読書感想文コンテストが開催され、日本を含む世界21カ国で実施されました。
この度の課題図書作品は、黄皙暎氏の『パリテギ-脱北少女の物語』(青柳優子訳、岩波書店)でした。
表彰式当日は、姜基洪韓国文化院長の挨拶に続き、渡辺直紀審査委員より審査の様子や講評などが報告されました。
受賞者には文化院長より賞状の授与、ならびに副賞が贈られました。表彰式には、仕事でお越し頂けなかった三河様以外の4名の方が、みなさんご家族とともに参加されました。
○ 最優秀賞(1名)
坂本秀雄 様 賞状+副賞(㈱アップルワールド旅行券 10万円分)
○ 佳作(2名)
文理絵 様、森川由紀子 様 賞状+副賞(IPOD)
○ 優秀賞(2名)
宋莉淑 様 三河悠希子 様 賞状+副賞(電子辞書)
・審査委員長:新潟県立大学 波田野節子 教授
・審査委員:福岡大学 熊木勉 教授、武蔵大学 渡辺直紀 准教授
審査にあたっては、3名の審査委員が作者情報なしにより感想文だけでの審査をし、入賞作は3名の審査委員の合議により決定されました。以下は、選考委員長より頂いた講評です。
○ 最優秀賞(1名)
「パリデギとは誰のことか」 坂本秀雄 様
審査員全員が一致してこの感想文を最優秀であると認めた。
投稿者は、小説『パリデギ』が主人公パリの意識と、その意識によって語られるパリの過去体験という複眼的な作法によって構成されていることを分析し、パリによって語られたムーダン体験は超自然現象ではなく語り手であるパリの並外れた想像力が生み出した内面の真実だと主張する。そしてパリデギが人々にもたらす「生命水」とはまさに想像力だったと指摘しながら、さらに作者である黄皙暎の人生をこの作品を通して「想像」している。じつに想像力豊かな感想文である。
○優秀賞(2名)
「ある青年牧師からパリへの手紙<生きることの意味・死ぬことの意味>」 三河悠希子 様
主人公パリが小説内で否定的に描いている宗教者(キリスト者)の立場から、あえて彼女に呼びかけるという形式をとった非常にユニークな感想文である。小説の作者とはまったく異なった視点を提供している。作者の呼びかけに応えて真摯に対話しようとする姿勢に敬意を表する。
「涙は国境を越えて」 宋莉淑 様
在日韓国人である投稿者は、『パリデギ』を読み終えたときに流していた自分の涙を糸口として作品と向き合った。そして涙とは自分のためではなく他人のために流すとき自己と他者の間の境界を越える力をもつ、パリが求めた「生命水」とはまさに人々が他人のために流す涙だという結論を引き出している。
○ 佳作(2名)
「たゆまない生命水の流れを願って」 文理絵 様
投稿者は『パリデギ』を読みながら、済州島から日本に渡ってきた自身の祖母の苦労や自分の現在の状況などさまざまなことを考え、「生命水」とは水のように自由に流れてすべてを荒い流し、国境や民族の垣根も流してくれる理想的の水だと夢見ている。多少まとまりにかけるうらみはあるが、初々しい感想文。
「パリデギを読んで」 森川由紀子 様
作品のストーリーを追いながら自分の心に起きた波の模様を素直に述べている。少し冗長なところはあったが、パリの流した涙は許しの涙であり、これこそ「生命水」だったとのだいう解釈と、他人の痛みのわかる人間になりたいというアクティブな結論が若さを感じさせる。
➡関連内容はこちら