殺人者の記憶法 저자 : キム・ヨンハ
필명 : ふゆのコリア 게시일 : 2021-11-11


混濁していく記憶との闘いを目の当たりにして、恐怖より悲しみに近い読後感が残った。

思い出すことを諦めない男の姿に、不思議と激しい同情を覚えた。どうやっても思い出せない姿があまりに哀れで、ページをめくるにつれて私は悲しい気持ちになった。自分の中にしかない悲しい記憶も、いくつか思い出したりした。

「主人公の記憶が曖昧」という設定が、読み手の私にどこか安心感を与えてくれた気がする。
冒頭から血と死体がチラつくのだけれど、怖がらずに読み続けられたのはきっと、主人公が恐れても後悔もしていないからだと思った。

娘を守りたい親心が、どこか悲しい。記憶がなくなる前に“目的”を達成してほしいとさえ思ってしまった。殺人の記憶すらも疑って良いと、そう思ったりしながら読み進めた。

淡々と今と過去を行ったり来たりする冷たい文章に、温もりをに近い読み応えを感じた。いや、読み応えよりも「聞き応え」があったと言う方がしっくりくる。そんな一冊だった。

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