行事名 講演会シリーズ2014「韓日交流史」第5回李成市さん
日時 14.05.23∼ 14.05.23
韓国文化院では、毎年ご好評いただいている講演会シリーズを今年も1月からお届けしております。 今年は「韓日交流史」をメインテーマに、古代から近現代まで様々な視点や時代を取り上げて、全11回にわたって韓国文化院ハンマダンホールを舞台にそれぞれの分野のエキスパートに語っていただく予定です。 本講演会シリーズの第5回目が、5月23日(金)に開催されました。 今回も、先月に引き続き韓国古代史と東アジア史を専攻され、早稲田大学文学学術院長・教授でいらっしゃる李成市さんをお招きし「古代東アジアの中の新羅・渤海・日本交流史」というタイトルでご講演いただきました。 前回の講演会で李成市さんは、7世紀中頃から8世紀までの新羅と日本は、数多くの使節が往来したものの、決して友好的な関係ではなく、古代の東アジアの国々の緊張関係と、それに対応するための様々な外交姿勢を使い分けた言わば軍事戦略的な意味合いの強い関係だったと語りました。 つまり、新羅は唐との関係改善中は比較的日本に譲歩しながらの外交関係であったものの、 唐との関係が改善されると唐を基軸とした外交戦略へと変わり、日本との関係は悪化するものの、渤海の台頭により関係が悪いなりに渤海牽制のために日本との関係は続けましたが公的使節の派遣は780年で途絶えます。 今回の講演会で本格的に取り上げられたのが渤海の存在です。 698年に新羅の北側に高句麗遺民が結集し、周囲の様々な諸部族を統合させていく渤海が建国され、北東アジアには、韓半島の南北に新羅と渤海という2つの王朝が併存する新たな政治秩序が形成されます。 渤海は唐と新羅に挟まれ、両国との軋轢が増していく中、外交の活路を見出した国がまさに日本でした。727年以降渤海は積極的に日本に接近し、滅亡するまでに日本に送った公的使節は33回、日本から渤海に送った公的使節は13回に及び、日本への接近は渤海の基本的な外交戦略であったと、李成市先生は語ります。 日本からすると、新羅との公的使節は780年で途絶えてしまいますが、727年以降10世紀前半までの間、渤海とは継続して定期的に使節を送り合い、大陸の最新情報や文物などが新羅に代わって渤海によりもたらされた部分が多かったと推測され、一方、諸部族を束ねてできた渤海としては、諸部族を束ねるためにも日本へ送る使節の中には必ず諸部族長を含め日本でのもてなしを受けられるよう配慮したと思われるとのことです。 渤海と日本は友好関係が結ばれた中、文献には、762年に日本が渤海との軍事同盟を前提に、藤原仲麻呂による新羅征討計画があったことが記録されています。 結局実施はされませんでしたが、軍艦の造成や近畿に住む新羅系の渡来人に新羅語を再び学ばせ通訳を養成する等具体的な行動に移すぐらいまでに両国の関係は親密であったと言えそうです。だからと言って、9世紀以降、新羅と日本の交流は途絶えてしまったのかというと、公的な使節は途絶えたものの、私的な交流、つまり新羅商人等を通して交流は続かれていました。 これに対し、李成市さんは 「近年の文化人類学、経済人類学等が明らかにしているように、このような交易が商業目的となるのはかなりの後世のことであり、この時代の新羅と日本の交易は、人間集団(共同体)相互の平和と安全を目的として行われるという人間の根本的な心性に根差した行為」だと語ります。 このように語りながら、正倉院に所蔵されている新羅から渡ってきた遺物をスクリーンで紹介し、数々の物品と共に、新羅と日本の貴族同士が物品交換をしていたことを示す文書も解説しながら、「これらの文書には未公開の者がまだ多くあるので、この時代の交流史の解明にも是非とも公開しいていただきたい」と注文する発言もありました。 また、渤海を語る際に、韓国と北朝鮮では共に渤海を自国史として解釈し「同じ韓民族が北を渤海、南を新羅が支配する南北朝時代であった」との歴史認識を持っていることを紹介しながら、李成市さんは「しかし、新羅と渤海が公式な外交使節を送ったのはたったの2回、その内容も自国語ではなく、外国語である中国語を介して意思疎通をしていたし、渤海自体が様々な部族を統合してできた国であるという、これらの客観的事実を見ると 同じ韓民族が南北朝として存在したと言うのは無理がある」と持論を展開。 一方、日本の歴史認識に対しても「日本ではこの時代を語る時、遣唐使をはじめ唐を中心として語るケースが多いが遣唐使はせいぜい12~13回に過ぎず、新羅とは70回以上、渤海とは50回近い公的使節を互いに派遣し合っているのを考えると、唐以上に新羅と渤海との関係が深かったのは明らかである」強く主張しました。 本講演会シリーズは、いよいよ6月と7月は2回にわたって仲尾宏さんをお招きし、朝鮮通信使をテーマにお届けいたします。どうぞご期待ください。
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